あっ、そうそう、思い出した!
これ、あたしがまだ子供の頃、一度だけ出場した音楽コンクールに被って行ったベレー帽だ。
うわぁ、懐かしい。まだ残っていたのね。
……にぃちゃんは覚えてるかな?
まだあたし達がもっとちっちゃかった頃、ご町内の催し物でやってたコンクールに、
二人で参加したことがあったよね。
あたしもにぃちゃんもまだほんのお子さまだったから、
音程の取り方とか全然知らなくって……。くすす♡
いま思い出すだけでも笑っちゃう!
二人とも、練習の時から音程をはずしっぱなしだった。
ただただ、周りの人より大きな声で歌ってただけだったの。

あたしはにぃちゃんと一緒に歌を歌えるってだけで、すっごく幸せな気持ちだったから
そんなの気にも留めてなかったけど、
オトナの人やにぃちゃんがあたしの歌を褒めてくれるのが嬉しくて……。
ずーっと歌い続けていたっけ。
あの頃から、あたしの歌はいつだってにぃちゃんに褒めてもらう為……
うぅん、にぃちゃんに捧げる為の歌になっていたの。
結局、コンクールは最下位に終わっちゃったけど、あたしは楽しかった。
そして、最後に言ってくれたよね。

「いつか、秋那の歌をもっと大きな舞台で聴けたらいいな」って。


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